白い夜または群青の山の/はて
 
向こうに見え
ている 吐かれたそれから 私は彼を知らな
い きっと 筆先を追いかけて筆を持つ指を
見ていない 私は彼を見ていない 回廊にな
った広い空間に幾つも飾られた絵を巡り歩い
ている 彼の視線を追って 街はいくつも足
下に屋根を張り向こう側に見える光を彼は描
く くっきりと 呼吸は消えている 彼の 
私は屋根を見上げているところで その街を
知らない

ずっと 光を掛けられた山は群青の濃く中腹
から突き出された滝が白く動くはっきりと消
えずに流れていく 私は仄暗く流されていく
絵のほとりで落ちる音を探している 

森の辺りで絵を描き続ける彼を置
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