一〇月、食事のあとで/ホロウ・シカエルボク
 
かったので予約を取った、予約を取ったのは友達だった、そもそも彼女がそこで食べよう、と誘ってきたのだ、そんな食事をしながら水の値段のせいでテレビの仕事を無くしたコックさんが居たね、なんて話をした、その店でそんな話をしていたのは多分私たちだけだった、近くのホールでクラシックのコンサートがあったらしく、周りはタキシードやイブニングドレスを着た中年以上のカップルでいっぱいだった、どうしてみんなあんなに人生に満足したみたいな顔をしているんだろう、と、軽く彼らの様子を窺って私は思った、もちろんそれはコンサートの余韻のせいでもあるだろう、でもきっとそれだけではなかった、私も大人になったらジャズやクラシックを聴く
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