われらの時代/葉leaf
情的関係や役割に求めざるを得なかった。
ところが、戦後教育は日本国憲法のもと、個人を最大限尊重する方向で行われた。個への侵害はプライバシーの侵害や名誉権の侵害として厳しく断罪されるようになり、生活へ科学技術の成果が取り込まれることにより、人々は他人との緊密な関係がなくても生活できるようになった。核家族化の進行から単身世帯の増大へと、人々はどんどん孤立していくようになった。
だが、戦後教育は結局片手落ちだった。個人の尊厳原理は、防御的に働くことが多かったが、積極的に働くことが少なかった。個人の尊厳原理は個人を守ることはあっても、それによって自律した個人が生まれる方向性を持たなかったのである。
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