詩/代償としての/ただのみきや
隠し切れずに懐からはみ出して
果たし状か、 遺書か、 恋文か、
すっかり黄ばんで色褪せて
枯れ茎のように裸で虚空に刺さったまま
十月の空は深く青く
気層の底に沈んだ天使の殻を借りて
奇妙な生き物が上って来る
地平の向こう
意識の半球から這うように
孵らない音節の、
白杖の、
ように振りかざし書き連ねられては消されて往く
瞬きと片言の、 揺らめきの、
のっぺりとした生命の、 忘却の、
暗い河面の、 閃く鬼火の、
じゅっ という オト の
がらんとした肉体の隅で
萎縮した精神は己の闇に怯える
響く透明の鐘の音の
幾重にも
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