詩/代償としての/ただのみきや
 
にも剥がれ落ちながら
死を待つ
  などしてもしなくてもひとしく 
             ふたしかに


悲しみと喜びを乗せた天秤の傾きのように
あなたは微笑んだ
大気には柿の実色の光が溶け出して
倒れ伏した影はその身より長く
仕舞い込んだ暗渠を測りだしている


生は生を内へ内へと貪った


ナナカマドの、 紅い実を飾る秋の、 
輪郭の、 指先の、 
ささやかな愛撫の、
果ての、 代償の、
瞑目の、 煙としての、
「マルメロ見ろ! 」と叫ぶ白痴の、 
      ビーナスの、 
    踏みしだかれる乾いた精神の
            
           文 裂





            《詩/代償としての:2016年10月5日》










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