キンモクセイの思い出/吉岡ペペロ
防衛庁の巨大なアンテナのさきが霧にかくれていた
富久町の高層マンションのさきも霧にかくれている
そんなことを眺めながら路地を歩いていたら
あ、
きょうの日付をあたまのなかで確認した
思い出をいくつか引き出しからとりだした
きょうがもう九月の下旬であることで合点がいった
キンモクセイ
キンモクセイの匂いだ
オレンジいろのちいさな花をさがして振り返る
ない、でも
キンモクセイの匂い
アスファルトが湿気た匂い
霧がおりてきている
この感じ、そうだ、
上海の朝だ、
大地のしっぽと人工の喧騒、
そんなことを
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)