新涼灯火 (三篇からなる オムニバス)/るるりら
とてつもなく広がっていて
とおいむかしの人のことばが
誰かをすくったり
だれそれを越えて 一遍の詩が
わたしの前に 広がっている
たまには
人でない生き物が読んでいるのかもしれない
わたしの書いた詩も
だれのものでもないかのしれないよ
小鳥のためかもしれないし
かなしみ横丁にたつ柳のためかもしれないよ
【灯火】
車窓の雨を見ていた
大型バスは わたしを乗せて雨の中を走る
わたあめ機の中を走る
雨は白い糸をひいて
しかも わたあめの糸のように
ほうぼうに しなる
不思議だ
天も地も ひっくりかえし
音まで ザラメ砂糖の音がす
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