新涼灯火 (三篇からなる オムニバス)/るるりら
 
とてつもなく広がっていて
とおいむかしの人のことばが
誰かをすくったり 
だれそれを越えて 一遍の詩が
わたしの前に 広がっている

たまには
人でない生き物が読んでいるのかもしれない
わたしの書いた詩も
だれのものでもないかのしれないよ
小鳥のためかもしれないし
かなしみ横丁にたつ柳のためかもしれないよ

【灯火】

車窓の雨を見ていた
大型バスは わたしを乗せて雨の中を走る
わたあめ機の中を走る
雨は白い糸をひいて
しかも わたあめの糸のように 
ほうぼうに しなる

不思議だ
天も地も ひっくりかえし
音まで ザラメ砂糖の音がす
[次のページ]
戻る   Point(7)