新涼灯火 (三篇からなる オムニバス)/るるりら
 
がする
あめのむこうがわを見ていた
なにもみえない
むこうがわを

ばかていねいに
見ていた まばたきも忘れて
見ていた
ぼやきも愚痴も嫉みも
わたしを取り囲んでいた
無数の糸が私をとりかこんだ

けれど、けして
わたしは、繭のようにはならなかった

目を閉じようとはしなかったからだ
なにも見えずとも見ようとしていたからだ
空っぽなままを 耐えていたからだ

となりで
目の見えない人が寝ている
おなじように目を閉じることができたなら
ゆめを見えることもできたかもしれなかった
雨音を拍手の音だと思えたかもしれなかった

それでも
見える人でありたかった
なんのあかりも
みつけだすことが できないとしても
 


http://po-m.com/forum/i_thres.php?did=321034
しりとりスレッド参加作品です。
戻る   Point(7)