メルシー/竜門勇気
 
せているのに気づきます。
心地よい朝の風がつかの間の涼しさを運んでくるでしょう。振り返ると大きな荷物を持った娘が声を上げます。
「お父さん!少しは荷物持ってよ!」
あなたは今日が家族で旅行に出発する日であることを唐突に思い出します。
あなたはポットに5人分のコーヒーを沸かすと、大きな伸びをしました。激痛があなたを襲うことはもうありません。
あなたの妻はタバコに火をつけ、なぜか優しく笑ってテレビの電源をつけます。
ゆったりとした綿のズボンとサラサラとしたチェックのシャツを羽織ると、あなたの足元に飼い犬と猫が戯れにじゃれついてきます。
5匹もの動物に組み付かれたあなたは素早く動くことが出
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