メルシー/竜門勇気
 
が出来ません。あなたの義理の息子が猫を抱き上げますが、焼け石に水のようです。
のろのろとリビングを移動し何年も使い込まれくたびれた
しかし使い勝手の良いカバンを肩にかけます。黒く使い込まれた革の財布もまた、くたびれていますが
それがとても心地よいとあなたは思いながら尻ポケットにしまい込みます。
空港までの道のりを考えていると、すでにあなたの息子が車に乗り込んでいて、しわくちゃの地図を伸ばしながら道のりを確認しています。
あなたに不安はありません。ひたすら爽やかな空気があなたの肺を満たします。
今日の昼頃には札幌の町並みをレンタカーで走っていることでしょう。
あなたは病室で話し合った旅
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