夢のなかに生きる/天才詩人
 
アウトを、微細な注意をはらいつつ、分別するようになった。指先についた放射性物質の粒子ひとつひとつを、注意深くピンセットで取り除き、水で洗い流した。あのころの記憶は、いまでも「僕」という人間の奥底に、薄暗いトンネルのごとく、息をひそめている。車はハイウェイを出て、再び金色の稲穂が揺れる州道を走り始め、僕は窓を開けた。地平線の消失点へ向かい、頭上をゆっくりと南中する太陽と先行・前後しながらアクセルを踏み続ける。このイメージを幾度となく夢のなかで見た。だが、僕は、この終わりなく続くかに見える道路が消え果てるその先に、どんな景色や人々が見えるのか、考えたことは決してなかった。

時は再び、1970年代
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