夢のなかに生きる/天才詩人
る。
これらの景色はすべて、僕が3歳のころ、乳白色に染まった午後の舗道を母に手をひかれて歩いたときに、見たものだ。母は私鉄線で一つ先の、駅前にあるデパートの洋品店へ向かっていたのだろうか。あるいは、昼食後の散歩だったのかもしれないし、デパート屋上のレストランで、外食に出かける途中だったのかもしれない。しかし、母親が、「体を鍛えるため」という新聞の謳い文句につられて、僕を週3回のスイミングスクールに入れたころから、僕は無口な少年になった。無口な少年はいつも床を這いまわることを好み、注意はモノ(object)に注がれた。そのころ僕はビキニ島核実験のあと雨に混じって降り注ぐ放射性物質のフォールアウ
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