原口昇平『声と残像』を読む(1)/ななひと
 
変わらないのにも関わらずなにか引っかかりを残すような様相。しかもその両者は同質のものではなく異質な相に属するものたちだ。さらにこの二つの言葉には、すぐに様々な意味が覆い被さってくる。「声」は「身体」をよぶし、「残像」も何か生きて動くものを連想させる。それらはともに、「本体」ならざるもの、フェティッシュとして肉づく。しかしそれらは手で触れることができないのであるから、正確にはフェティッシュを喚起する「あるもの」ということになるだろうか。それらは「記憶」へとも容易に連乗し、しかも「ぼんやりとした」鮮明ではないものとしての「記憶」を呼び起こす。「声」は必ずしも「言葉」ではない。「言葉」になりそうでいて、
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