アウトリーチ/ただのみきや
 
えないこの場所にも
竿を出している者は一人もいない
埠頭の少し先の方まで歩いて
いいところで立ち止まる
海は凪いで(もっとも堤防内だが)
 ちゃぷり
   ちゃぷり
コンクリートをしゃぶっている
季節や時間 天気によっては
さざなみが立つほど片口鰯の稚魚やチカの大群が
水面近くを泳いでいることもあるが
いま世界はお昼寝中
小魚たちも砂漠を渡る隊商もみんな
カモメは目を開けたまま夢を見ている

段差の下へ手を使って降りてみた
すぐ水に触れられる高さだ
メダカほどの稚魚が二匹連れだって通り過ぎる
友達と遊びに出たくてしょうがない夏休みの小学生のよう
靴をぬいで素足
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