アウトリーチ/ただのみきや
彼は五歳でその後を
一歳半だった弟もまだ元気で追いかけていた
一瞬も目を離せなかった
いまでも離せない
曇り空の記憶から眩い光で切り取られ
愛しい残像は永遠に心を走り回る
そういえば一度
公園の柵から乗り出して
彼の虫取り網にテグスと錘と針をつけて
食パンを捏ねて餌にして釣りをしたことがあった
釣りに慣れた地元の子供たちが数人覗いては
「絶対釣れない」と言ったが
十分後ぐらいに大きなウグイがかかった
したり顔でその子らに
「人間が初めて魚を釣った時
釣り竿や仕掛けが揃っていたと思うかい」
なんて言ったものだ
さすがにお盆だけあって
いつも釣り人が絶えな
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