呪術師の末裔/ただのみきや
放する
知恵の実から抽出した毒と薬の表裏一体の金貨は
人間を野の花から区別して自己と世界の支配者の幻想を与える
すべてを要求する
別格の愛人だ
引き寄せて歌の精よ唇に
口移しで巫女たちの芥子のように甘い息と共に
透かし見える幻の時の向こうから
下腹部から胸へ胸から口もとへ
大きな孔雀蛾が羽ばたき飛び出すように
叫べ! 夜へ!
魂の全てを射精し尽くして
しなやかな拘束の呪術よ
骨とはらわたを打ち鳴らし
血の巡りを操って
思考は灰に感覚は燠に
炎は舐める
空間を曖昧に区切り
無数の顔を時折ゆらしながら
残像は風化に委ねればいい
イメージは奇妙な美しさでこちらを見
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