君の部屋/葉月 祐
本に夢中な君に
夢中になっている 私は
その本が閉じられるのを待ちながら
この部屋の中の日だまりに
溶けてしまいそう
グラスの中の氷は
琥珀色の液体の中に隠れて
アイスティーは だんまりしたまま
飲み物としての役目を終えた
風は涼しくなったけれど
太陽の光はまだ「ここにいますよ」と
無言で主張しているかの様で
窓から降り注ぐ午後の陽射しは
部屋の匂いを強くしていく
私の心をくすぐり続ける
君の部屋にも 秋の気配
ところで私は こうして君を待つ度に
この空間が好きだなと よく思う
君がいて 君の好きな本の匂いがして
窓から降る真昼
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