Avenida 68 (藝術としての詩・続)/天才詩人
 
トとして賃貸されており、あまり楽ではないらしい彼女の家族の生計を支えていた。Lの家族が暮らすその屋上からは、灰色のセメントの住宅群や、大型量販店のむこうにスモッグにかすむ首都高速の防音壁が見え、そこを疾走する自動車のタイヤがアスファルトを擦る音が、微かにしかし絶え間なく聞こえていた。

いまではほとんど市井の人々の口にはのぼらない。だが、ちょうどその量販店の真新しいアスファルトの駐車場があるあたりには、ほんの4−5年前まで、この町の玄関として今世紀のはじめに建設された、ル・コルビジェ様式の近代的な国鉄ターミナルがあった。その話をどこかではじめて聞いたとき、僕は心が躍った。そして、それ以来、国鉄
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