水銀の涙 (未完)/043BLUE
 
 a.

睨み合う矮小

憎しみと欲望は
隔てられた割れ目の
隙間で歪曲された

輪ゴムの一面の憐憫を
その他の面の不実を

伸ばし
引き裂き
廃棄され

虚しさの
秩序の歴史を
捏造する


 b.

林檎の輪郭の
微かな震えを
なぞりながら

ろくろの上で
回り続ける
寥々たる老廃物は

くも膜のガード下で
燐酸カルシウムを
むさぼり食う

105号室の
狼狽する老婆は
少女のように
微笑みながら

虚しさの
秩序の歴史を
捏造する


 c.

ドアの隙間に
びっしりと貼りついた
藻類のような

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