夏を塗れ/天才詩人
 
、 図書館の書庫に冷暗され、保管される。僕たちの会話がシャボン玉のように、風景に唾をつける。走る。駄菓子屋の裏の、人々が井戸端にあつまる、樋をつたって昇天する。風より早く走る、そんなイメージ。いつも手がふるえていた。いくつかのディヴァイスをそれはつかんでいた。操作していた。雨が降る窓の向こう に、父と母が待っている。サッポロ一番の揚げ麺をくゆらせながら。ガラス窓の午後、僕は家路を、いくつもの雨水を跳ね上げながら。バウンドする。リズムは出口を見出さない。出口への通路は見つけられないまま。1945年。

電車のドアのチューブが音を立てて閉塞すると、8月の暑い空気が手を触れる。彫像は黒く焼かれている
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