夏を塗れ/天才詩人
いるが、静かに眠っているようにも見える。造成地のトンネルを抜け、僕らは丘の上の校舎に衝突する。衝突を毎日くりかえす。手をつなぐ恋人たちは、陽だまりの影を静かに打ち下ろしていく。たどりなおす。ノートに書き込む。1945年。臨海地帯の夏は魚の影がいつも風におだやかなウラニウムをつけ加えている。加速する。そうして忘れた記憶は雨になる。信号機の赤や黄色だけがまぶしく、人の歩かない歩道を歩く。ショッピングセンター。なぜ焦げたのか、なぜ、塗りなおしたのか。答えの出ない答案はいつも赤や黄色で塗りたくられる。塗ることによって表現する。僕らの会話はいつもセ キュリティーでロックされている。僕は見たい。熱を帯びて、さかさまに乱反射したい。そうしていくつもの分散された影を、僕は今も手のなかにもっている。 8月。
8月。三日月。汗をかく身体。振り下ろしていく、窓を閉める。僕はいつも、低い屋根の間で路頭に迷う。太陽が街を焼き付けていくことを、夢想する、エネルギーがくりかえしゆらゆらと鉄塊を温める。日本の夏。
戻る 編 削 Point(2)