夏を塗れ/天才詩人
そして天井に吊られたランプのコードが
僕らの見えない風景をさえぎるとき、僕は
風景について、たった一つの言葉を、ある女性に捧げていた。
それはたぶん妹であり、母であり、僕をとりまく
いくつもの女性の白く乾いた彫像。僕は手を触れる。
顔の輪郭をなぞる。
たたみに突っ伏す、僕の顔。ジグザクに伐採されている
僕の身体。畳はいつもいくつかのやり方で僕を追い詰める。
そうして僕は6畳間の隅の黒い影となる。僕は二つの光る目と
なって日々をみつめている。
母は、母は母は。
母の存在は。母は扉を開ける。母は蓋を閉める。母は、退却する。深く遠い、炊事場の奥へと。ナイロン製のゴミ袋に詰ま
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