あの日の夏の蒸発/ホロウ・シカエルボク
よく遊んだ
海の家の廃墟があることを思い出す
この海が賑わっていたころ
ほんの少しだけやっていた海の家
堤防の危なっかしい狭く急な階段を
ゆっくりとゆっくりと降りると
時を閉じ込めた砂浜の景色
無性に叫びたくなる砂浜の照り返し
わたしは海の家を探して走った
靴に砂が注がれるのにも構わずに
記憶に残る岩のかたちを
懸命に思い出しながら
もしかしたら壊されているかもしれないと一瞬思ったけれど
なぜかいまもあるような気がした
ほんの少し砂浜に迫り出した岩を回り込むと
海の家はそこにあった
壁はほとんど落ちてしまっていて
屋根ももう危なっかしい状態
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