あの日の夏の蒸発/ホロウ・シカエルボク
 
状態だったけど


わたしは息を整えて
懐かしい入り口をくぐる
土間のところに放置された安っぽい丸椅子に座って
目を閉じると
どこかのアニメみたいに
幼い自分に会えるのかも、なんて
そんな気がしたけれど


捨てられた漫画雑誌や
男性週刊誌
あの頃判らなかったことが
忘れられた本棚にたくさん並んでいた
うす笑いを返せる程度には、わたしは大人になりました


よくある歌みたいに
思い出は
シーンで浮かんでは来ない
ときどき聞こえるラジオみたいに
ふと脳裏をよぎるだけ


ゆがんだ入り口のかたちに
切り取られた波打ち際が




わたしを
帰れなくさせるかもしれない




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