樹海の輪/為平 澪
 


さっきから大きな毒蜘蛛が樹海を編んでゆく
その下を長い大蛇が這ってゆく
細かい切れ間から もう 青空は望めない
蛇の腹の中で元詩人たちの群れが
溶けて泡を吐く

見えない空
地上にない文字
樹海にはそうゆうものたちが浮遊して
死人たちがそれらを夢想して
この樹海を成立させているのか
乾いた音だけが響いてくる

    
    *       *

  (カラカラカラカラ・・・)

    *       *


誰かが糸車をまわしている
けれど
その糸にしがみついた多くの紅い情念たちが
歯車を狂わせてゆく
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