island/ホロウ・シカエルボク
かないその声は
奇妙な抑揚を延々と震わせていた
うたの始まりは何だったのか
それは祈りのようなものではなかったか
油虫が壁を這う、新聞を丸めて叩き落して
仰向けになったところを踏み潰す
内臓が痛むような音がして
足の裏に潰れた黒いトマト
カサカサとした忌々しい生の終わりを
ティッシュペーパーで拭いて丸めて
捨てる
売春婦たちはいつでも
トロトロになっているような声を出しているが
寝床に入るとあらぬ方を見て
忘れたもののことばかりを考えている
往生際の悪い谷底で
どこかの馬の骨の悪臭が出口を探している
さよなら、前奏だけがおまえのすべてだった
雪平
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)