音楽が聞こえる/ただのみきや
 


心の真中から雨は降り始め
女は印象だけを残して溶ける
遠くで叫ぶ 誰かが
笑いながら一刺しにした
愛は見送る行為が一番だと口づける
濡れたアスファルトに映る顔


権力者の不祥事こそ大衆のチューイングガムだ
繰り返しそう学んでもの覚えの悪いまま
嬉々として音楽を失って往く
溢れかえる音楽の中で
溢れかえる詩の中で
釣り上げられた魚だけが知る
水という日常の奇跡を
深く呑み込んだ美味いものが
はらわたを掻き裂く新月に変わる頃
おれたちは笑いながら呻きながら
死に狙いを定め
あらゆる空想ゲームを総動員して
自分のご機嫌を取るのだろうか
それでも構わないが
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