ヘビトンボ/ただのみきや
ひとつの種だけの繁栄なんて
世界を危うくするだけなのさ
もっともそんな生き物もいるにはいるがね
きみはわたしの食事にならず
女郎の食事になった
女郎の卵たちのためにね
役に立つって訳さ
悪いことじゃない
きみはめったにいない幸せ者さ
これ以上なにを望む
死んでから蟻に喰われたいのか
どのみちきみの寿命はせいぜい今夜いっぱいさ
それなら喰われてやりな
蜘蛛は案外上品に食事をするんだ
生殺しのまま蟻にバラされるよりずっといい}
もう長くはない
わかっていた
ただあの
月の静かな
呼びかけに
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