ヘビトンボ/ただのみきや
 

体液が滾り熱を帯び
無数の翅々が舞い駆け
逆巻いて
歓喜が嵐のようだった
二度と戻らない夜
追いかけていた
あの仲間たちと同じだ
過去を夢見ながら
落ちて往くだけの飛翔だった
あとは死が
残されただけの

受け入れよう
ああ
それにしても
おまえ
美しい
どこか
似ている
精をささげた
あの
あれと
腕の数が違うが
抱きしめてくれるか
苦しくない
刺すのか
その牙で
ああ
痛くはない 
そんなに
ぼんやりしてきた
毒が
回る
気持ちいいような
不思議だ
いろいろなものが
交じり合い
溶け合って
自分が薄められて往く

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