いまはそこから立ち去っていくだけの/ホロウ・シカエルボク
 
もない花なのだ―ここに居るとそうしたことが瞬間的に理解出来る、まるで霧散した滴が呼吸と共に吸い込まれるかのように、だ―木のうろに座り、少しの間眠る、眠るうちに、一本の木になった夢を見る、太陽を臨み、大地を掴み、澄んだ水を汲み上げ、静かにのろのろと上昇していく一本の木になった夢を、それはおそらくうろにしまい込まれたその木の記録なのだ、本当の生命には輪郭がなく、可能な限り運命に委ねていく感覚だけがある、なぜか?それは呼吸をしているからだ、生まれたその瞬間から、自分であるために自分でないものを取り込み続けているからだ…僕は目を覚ます、そして、こうしてうろの中で目を覚ますのはいったい何度目だろうと考える、
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