トゥリャ・トゥリャ/ただのみきや
 
ゐろの観念
像を得ようと泥濘を渡る
いま雲雀の声にめまいして
言葉は死者にふさわしい
生者よ 語るな 戦げ
なにごとも代償は必須
見開くなら
欹てるなら


木曜日
風は体現する
居場所を離れられない者の心は
遠く異国の街を彷徨い
旅人の心にはいつも
故郷への扉が開いている
埃と光に湧き立つ髪は
夜には河のように渦巻き流れ 
眼差しは井戸で冷やされた葡萄
しずくを纏い輝いて
挑むように
誘うように
故郷でも目的地でもない
曖昧な匂いを追いかける
旅のような日々


金曜日
くもりガラスの向こう
シャツを脱いだ女
生への温度差が肌をつたう
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