死活/飯沼ふるい
 



コンビニの冷房は汗ばむ体に辛くあたる。
ライターと香典袋を購うと、それだけで一日の予定が終わってしまった。アイスもいちど手に取ったが、なにか不謹慎な気がしてもとの場所に戻した。
ギンギンの陽射しを刑事ドラマの主役でも演じるように睨み返して車に乗り込む。
来た道をそのまま逆に走っていると、フロントガラス右上端にぼやけた染みが浮いているのに気がついた。
手を伸ばして拭こうとするとそれは汚れなどではなくて、目の前を覆うガラスなんかより遥か彼方の青空で溶けかかっている月だった。
精液を全身に浴びたような白ーー。そんな喩えが頭に浮かぶと、恐ろしくなった。今ここに僕がいることが恐ろしく
[次のページ]
戻る   Point(2)