夜明け前、記憶の中で明日を/ホロウ・シカエルボク
 
とだ
せめてわたしくらいは、きっとそう思ったのだろうし
あのまま弟が大きくなっても
すごく苦労をするだろうことは判りきっていた
お金だってろくにない家だったから
それでもこうして寂れた街の
誰も居ないターミナルで朝一番のバスを待っていると
もしかしたらわたしは家族を待っているのかもしれないと思うことがある
記憶がバラバラになるくらい変わりないこんな場所で
どこかからかれらが歩いて来るのを待っているのかもしれないと
もう何度こんなふうにバスを待っただろう
おなじところに居つくことが出来なくて
もう何度見知らぬ土地の名前のついた切符を買ったのだろう?


太陽が地平線の前
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