夜明け前、記憶の中で明日を/ホロウ・シカエルボク
との街の駅で
弟がまだかあさんに抱かれていたから
きっとわたしが十にも満たないころだ
あの時は雨が降っていただろうか?
夜明け前の駅は
幼いころの記憶と
現在をまぜこぜにしてしまうほどに同じ味気なさで
とうさんにもかあさんにも、弟にも
それについて聞くことは出来ない
かれらの魂はどこかのみずうみの底で
ピックアップトラックのドアを開けることが出来ずに泣いている
ペットボトルを送った
オイルのにおいが染みる
馬鹿なことをしたと思ったけど
なにもせずにいるよりはきっとましだった
かれらがわたしを運命から除外したことなんて
もういまさらどうだっていいことだ
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