花畑(終)/吉岡ペペロ
濡れていた。お腹が痛い。股関節も痛い。
和夫くん、和夫くん、ぼくは和夫くんにすがるように祈った。涙が出ていた。痛みでからだがガクガクしていた。
ぼくの頭につらぬくものがあった。
和夫くんはいつもこんな思いをしていたのだ。トイレも、教室で座っているときも、足を投げ出して正座していたときも、ぼくとの帰り道も、あの大きな病院に入院していたときも、妹さんたちを守っていたときも、こんな痛みのなかにいたのだ。
ぼくは流れてくるアマリリスの音色に合わせて歌おうとした。けれど、歌詞が思い出せない。
ぼくは声を圧し殺して立ち上がった。
トイレからそっと出てカウンターに指をつきながらすすんで一
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