花畑(終)/吉岡ペペロ
がったとき、真っ直ぐ進むことは出来た。
お店もそうだったが二階も清潔にしていた。ちいさな机のうえに便箋が丁寧に置かれていた。鉛筆削りのカッターナイフがその脇に添えられていた。刃をしまう緑色した柄が宝石のようにひかって見えた。
ぼくは背の低い箪笥に腰かけていた。阿部定が敷布を音を立てながら整えていく。
「お兄さん、なにやってるひとだい」
「理髪をやってます」
「理髪かい、ハサミで切ってるんだ」
阿部定がにたっと笑った。
上目遣いの阿部定の乳房が見えた。かくれていた真珠の首飾りが胸からこぼれていた。阿部定はぼくの目を見逃さなかった。
「これかい、あたいは金属めっきアレルギーなの
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