花畑(終)/吉岡ペペロ
 
しい音色よねえ」
 近くの長屋に住む子どもが練習しているのだという。
「どっち? 痛いのはどこ?」
 阿部定が熱燗を用意しながら聞いてきた。
「暖めちゃえば治るわよ」
 お猪口に酌をされて、ぼくと阿部定はカウンターを背にして飲んだ。痛いこともあって話すこともなくて、はやい勢いで酌をうけていった。
「なんだかブランコみたいですね」
 ぼくが左足首だけふらふらさせてそう言うと、うまいこと言うわねえという感じで阿部定が太ももにのせた手を動かしてきた。
「二階に上がれる? 上がってきなさいよ」
「そんな」
 阿部定にさそわれて自分がなにをやっているのかはっきりと気がついた。
 子ども
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