花畑(終)/吉岡ペペロ
 
て出ていった。
 阿部定がカウンターから出てきた。
「悪いねえ、若いひとにくだらないものみせちゃって」
 そう言って、ぼくを土間に座らせようとした。
 座ろうとすると右股関節に激痛が走った。ぼくは阿部定に断ってカウンターのイスに軽く腰かけた。どうしたら痛みを感じずに座れるだろうかとしばらく探った。
 結局カウンターに背を向けて足を投げることにした。その横に阿部定が座った。阿部定もぼくもしばらく黙っていた。阿部定がぼくの太ももに手をのせて立ち上がりのれんをしまいに表に出た。
 どこからかハーモニカの音がした。ぼくの横に急いで座りなおして阿部定もその音色を聞いていた。
「なんだかさびしい
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