花畑(終)/吉岡ペペロ
 
な顔が歪んだ。
「おっさん、しつこいんじゃねえか」ドスのきいた声をぼくは発していた。
「あん?」
 口説いてないほうの男がぼくをにらんだ。
「あんじゃねえよ、しつこいんだよ」
「なんだてめえ、いちげんの客だろ、入ってくんじゃねえよ」
 ぼくは土間のテーブルを飛び出していた。男と揉みあって狭い店内を転げた。転げながら思いっきり男に蹴りを入れた。それから立ち上がり口説いていた男にも蹴りを入れたときだった。
 空振りして足がカウンターにぶつかって、ぼくの右股関節あたりにビクビクビクと肉がふるえるような音が鳴った。
 激痛で右足が動かせなくなった。男ふたりは、お決まりみたいな悪態をついて出
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