花畑(5)/吉岡ペペロ
だという計算がぼくにはあった。
師匠には申し訳なかったがぼくは勝手にその話を進めていた。その店のなじみのお客さんと顔をあわせるために、休みの日にはそこに行くようになっていた。すこし手伝ったりしては、ノートにお客さんの名前や背格好や髪型の好み、整髪剤の好みだとかを書き込んだ。ノートのお客さんがさんまわりぐらいしたら、店を引き継ごうということになっていた。
ある日、ぼくは師匠に呼ばれて神田の店に行った。
師匠が開口一番、「笠置よ、おまえ、店出ていけ」と言ってきた。
「え、なんでですか」ぼくは面食らった。
「なんですかじゃねえだろっ」
ぼくが馬鹿だった。店員に酒の席でいま計画している
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)