花畑(5)/吉岡ペペロ
 
した。

 ぼくは働いたお金を酒と女遊びに使った。母親も死んでもういない。片親だったから天涯孤独の身の上だ。
 仕事で指が疲れて、大好きだった切り絵もやらなくなっていた。師匠には結婚をよく勧められたが、ぼくには世間を愉しみたいと思う気持ちが強かった。
 それともうひとつ、ぼくに店を譲ろうかという話があった。やりたいけれど店を買うお金がないと話したら、お金は働きながら払ってくれればいいと言ってくれた。そのひとは腰を悪くして立ち仕事がもう無理なのだそうだ。
 店の家賃は売り上げのなかから自分で払うわけだし、店の備品も権利料を月々支払うわけだし、独り身だし、べつにうまい話でもないから大丈夫だと
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