花畑(5)/吉岡ペペロ
 
たし、ぼくはあることをいつも探しながら読んでいた。
 あることとは、少年時代の痛切にまつわることだった。
「店長、熱心ですね」
 ぼくは店員にそう言われて、
「当たり前じゃねえか、髪切り屋は世間様の頭を刈ってんだ、世の中のことも頭に入れねえで、人様の頭を刈れるかってんだ」
「それは分かりますけど、それにしてもいつも隅から隅までって感じで、すごいなって」
「すごかないよ」
 ぼくはそう言って週刊誌を置いた。
「それよりも、今夜いっぱいやりにいかねえか」
「おごりですか」
「あたりめえじゃねえか、おい、蒸しタオルきれてねえか」
 ぼくはそう言って店員をその場から追い払った。そして
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