花畑(4)/吉岡ペペロ
 
モニカならかまわないような気がした。
「ぼくは楽しかったよ」
 ぼくが歌わないから和夫くんも吹くのをやめてそう言った。
「和夫くん、退院したらまた歌おうね」
 ああ、和夫くんと歩いている、そう思うとまた、ぼくの胸に花畑が広がった。
 和夫くんが振り向いた。振り向いたまま消えていった。
 ぼくは病室までひとりで歩いていた。歩くたびに体じゅうの毛穴がひらいていった。
 101、102、103、病室の番号を目で確認しながら歩いていた。
 毛穴がひらききるとどうなるのだろう。目に見えていることと身体で感じていることがべつものだった。104、105、106、毛穴がどんどんひらいていく。もう把
[次のページ]
戻る   Point(2)