花畑(4)/吉岡ペペロ
 
う把握できないくらいひらいていく。なにかしらちからがみなぎるような気がする。いったいどこがゴールなのか分からないのに、ぼくには分かった。毛穴がひらききったことが分かった。
 ぼくは真っ暗闇のなかに浮かんでいた。宇宙ってこんなところかも知れない。ぼくは宇宙に浮かんでいた。
 107、ノブをまわすと和夫くんがベッドに寝ていた。
「ああ、笠置さんのお坊っちゃん、和夫に会いに来てくれたんだね。ごめんね、今寝てるの、和夫、笠置さんが来てくれたよ」
 和夫くんのお母さんが疲れた顔でぼくを迎えてくれた。和夫くんの枕元には懐中時計がかけられていた。まじまじと和夫くんの顔を見た。眠っている和夫くんのまっしろな顔が大人びていた。睫毛がふさふさで神様のようだ。神様がどんなのかはわからないけれど、ぼくはこころのなかで手を合わせていた。泣くのは失礼だと思って身体にちからを込めていた。さっきみなぎったちからを思い出しながら。
 和夫くんはその年の夏、十五才で亡くなった。



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