花畑(4)/吉岡ペペロ
はじめてだった。和夫くんは病気になっても立派なんだと思った。
受付で和夫くんの病室の番号を教えてもらったそのとき、ハーモニカの音色が聞こえてきた。
アマリリスの曲だった。まさかと思って見回すと、和夫くんがいた。
「来てくれたんだね」
和夫くんは松葉づえをついていなかった。ああ、こんなに良くなったんだ、ぼくのこころは晴れ渡るようだった。
病室まで和夫くんが先導してくれた。
和夫くんはハーモニカをやめなかった。
「笠置くんも歌ってよ」
「病院だよ、ハーモニカ吹いてて大丈夫なの」
「うん、笠置くんにしか聞こえないから、大丈夫」
「みんなに聞こえてるよ」こんなに上手なハーモニ
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