花畑(1)/吉岡ペペロ
 
えた。
「そうだよ、食べてみないと分からないんだよ」
 ぼくには和夫くんがなにを言い出したのかが分からなかった。でも、「食べてみないと分からないんだよ」という言葉が印象的だった。
「ぼく、きょう戦うんだ」
 和夫くんが涼しげな瞳で宙を見つめて言った。
「え、戦うって?」
「渋柿と戦うんだよ」
 和夫くんらしくない台詞だった。
「食べてみたの?」
「うん、なんどもね」
「それで戦うんだ?」
「そうだよ、いけないことはいけないんだと、ぼくは言うよ」
 いつのまにか和夫くんの目が強いひかりを放っていた。長い睫毛がカラスのように勇ましかった。
「和夫くんが怒るんなら、よっぽどなん
[次のページ]
戻る   Point(1)