神棚のサドル/カンチェルスキス
テレビのリモコン、バイクのヘルメット、会議用の机、パチンコ台、てんぷら鍋など、ちょっとしたホームセンター並みの品揃えだった。老婆はなぜか昂揚した。見てるだけで幸せだった。無類のホームセンター好きだったのだ。拾って使うわけでもないのに、我を忘れてあたりをうろついてると、いつの間にか、日が暮れた。老婆はいったんホームセンターに入ると、閉店の音楽が鳴り始めるまで出てこないのが常だった。家ではじいさんが、ひとっ風呂浴びて腹を空かしている。夕飯の買い物もまだだった。焦る気持ちとは対照的に、夢中で歩いたせいで、老婆は自分がどこにいるのかわからなくなった。いや、沈んだ夕日の位置はわかってるし、砂浜がどこまで続く
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