土人/ただのみきや
 
腐臭が漂う
肉体から
愛人を
引き抜かれ
刈り取られ
毟られ
散らされ
晒されて
乾かされ
集められ
火葬にされて
空の大口に吸いこまれて往った
すべてを喪失したのだ
おれが死んだのか
死は眠りか
眠るが勝ちか
価値は不可知か
コオロギは誰の首を齧ったか
冷たい月が背に刺さり
割れた額に氷が張る頃
やがてみんな嘘になる
誰も責任を取る者はいなかった
タントラチックに交合して
一つになった生死神は
干からびた記号に過ぎない
モヘンジョダロあたりの石ころだった


おれは砂漠になった
砂漠の人魚が
翡翠の鱗で春を売っていた
男たちを喰らう鈴
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