土人/ただのみきや
う鈴の音に魅入られ
おれは笛を吹き
扉のある背中をなぞる
ひどく馬の足の筋を切る日だ
ひどく夜が崩落し
蒼白い夢に住む夢魔の尻が念写される
おまえは死神を鍋で煮る
しろい湯気に溺れながら
生神の肝をしゃぶっているのか
遠い里の暗黙の壺の中で
目覚めない
ひどく眠れない朝に
乾いた音が喉を渡る
もやは廃屋だ
かつて
おれは畑だった
おれはおれを見い出さず
ただ雀が落ちてくる
沸騰した眼のすり鉢に
うわ言のように
落ちてくる
かつて人だった誰かが
青大将がすり抜ける際の乱反射を掴み損ねたのだ
二十二口径ピストルの即興劇の
軽すぎるオノマトペだ
案山子が書く詩が隠す死が
巻き戻されて
かき氷で甘く冷やされる
両手に満たした黒い土
おれはおれに
種をそっと手渡した
古い夏が滾るように精神を流失させる
ミミズは見ず
カエルは帰らず
骨の光る音が耳を消すころに
《土人:2016年3月29日》
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