貼り紙世界の果て/カンチェルスキス
 
めらいはあったが、決断に後悔はない。待望の初孫ゆえである。
「誠に勝手ながら、今日と明日はお休みさせて頂きます」
 とペンを置いてから、主人は何だか物足りない気がした。生まれてくる元気な初孫を想像した。自分はおじいちゃんになるのだ。その瞬間、誰にも見せたことがないとろけた笑顔が浮かんだ。想像妊娠ならぬ、想像おじいちゃんである。高まった感情ゆえに、こんな一文をつけ加えてしまった。
「初孫がじぃじと呼んでくれるまで、ええい、休みだ!」
 そしてその通りに書いた。能面のような貼り紙が、ひときわ感情豊かになる一瞬である。
 昔からの常連客は多少困ったが、すでに初孫のかわいさを知る同世代である。「
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